障がいのある子どもに最善の子育てを

日本ポーテージ協会

前監事 星 登志雄

 監事になった経緯

旭出学園(特別支援学校)の校長退任後に特任教諭として卒業生の資料や相談の窓口などの業務に当たっていたある日、山口薫先生から日本ポーテージ協会の監事に誘われました。山口先生は旭出学園の創立者三木安正先生ともご縁の深い方であり、学園の理事を務めていただいていましたので快諾いたしました。

旭出学園の建学の精神は、「卒業のない学園」と「両親の協力する学園」です。「両親の協力する学園」の精神は、ポーテージプログラムの親御さんと専門性の高い人たちが協力して子育てをするという精神と同じです。旭出学園には三木先生が1960年代にお考えになられた「教育プログラム」があり、「身辺生活の自立」「集団生活への参加」「社会生活の理解と参加」「生活の常識と技術」「生産人としての自覚」という大項目に中項目、小項目を記した『教育の記録』が児童生徒一人に一冊ずつ用意されていました。子どもの実態をその冊子でチェックして、“最近接領域“の項目を目標に立て、教育支援に当たり、その変化を記録するのに使っていました。この手法は、まさにポーテージプログラムと同じではないでしょうか。

 子どもの最善の利益の支援を

中学部の担任をしていた時に、熱心な親御さんがいらっしゃって学期末ごとに個人面談の申し入れがありました。学期初めに保護者に申し上げた教育目標に対しての経過の説明を聞きたいというものでした。学期初めの目標は担任が「こうなってほしい」という願いのようなものですが、一年過ぎたころには目標にしていた姿に変わっていることを何度も体験しました。日々の生活の中で、願いながら接していたのが実ったのでしょう。大人の過度な願いは障がいの子どもに負担をかけますが、“最近接領域”の願いは子どもの最善の利益の支援になり、子どもの可能性を引き出すことにつながります。

 「自分らしく生きる」

教育の目標は“幸せになること”と考えています。特に大人になったときに「自分らしく生きる」ことが幸せの状態です。それには、「おなかがすいた」「頭がいたい」「〇〇がしたい」などといった意思の表示が基盤になります。今般の改正「障がい者差別解消法」でも“意思の表明”という言葉が随所に出ていますが、自分の感じたこと、考えたことを表現することは、人生を豊かにすることだと思います。

ポーテージ会員の皆さん、子どもにやさしい社会をつくっていきましょう。

 

 


星登志雄(元私立旭出学園特別支援学校校長)さんは2011年から2023年度まで12年間日本ポーテージ協会監事として、様々な角度から協会の事業についてご協力を賜りました。