コロナ禍での虐待防止に必要な支援 ―『ポーテージプログラムが取り組む発達支援と親支援』―

認定スーパーバイザー 成澤佐知子

abuse prevention

長引く自粛でのストレス

今から一年前。「新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発令され、外出自粛や休校生活が長引くなか、児童虐待への懸念が強まっている。」新聞でこのような記事が目にはいりました。家の中で子どもといる時間が増えたストレス、言うことを聞かないことへのいら立ちでつい手をあげてしまうというものが多かったようです。活動自粛で他人とのコミュニケーションが減り、誰にも相談できず不安がたまっていることが要因として大きいのではないかと説明が加えられていました。現在でも、コロナ禍において同様の事例が継続して報道されているところです。
虐待に関しては、家庭だけではなく、事業者や施設、学校などでも多くの事例が上がっています。許しがたい悪質なものもありますが、報告内容をみますと「本人への対応に困った」「指導のつもりだった」というものが多く挙げられています。

ポーテージプログラムと虐待防止

ポーテージプログラムでは、1970年代から親・家族が中心となって、日常生活の中で子どもの指導を行う「家庭中心アプローチ」を実践し、「親・家族支援」の重要性を強調してきました。「家庭中心アプローチ」は「家庭」が指導の場であり、「日常生活や遊びの中」で子どもの発達を支援します。そこに大きな意味があります。

悩みや思いを聞いてもらい自らの環境や行動を「こうすればよい」と整理できたとしても、実際にお子さんと関わる時に、そううまくいくものではありません。多くの場合親自身が、得た情報を応用することが難しい、自分がどのように行動すればよいか、子どもにどのような言葉を使って話せばいいのかわからない、といったことが起こります。そして、うまくいかない結果、暴言や、暴力に至ることにもなります。

子育てする力を支援する

ポーテージプログラムの親・家族支援は、ニーズに応じた情報の提供やカウンセリングによる支援等も含んでいますが、いわゆる「子育てする力」を支援するという意味でのエンパワーメントです。親とともに取り組む行動目標を選び、応用行動分析の原理を使ったプログラムを通じて、親自身が子どもとどのように関わるかを学び、実践していきます。
子どもにとっては実際的で、まさに「子育てする力」を支援するプログラムと言えると思います。
多くの方に役立てられることを心より期待しています。

 

成澤佐知子認定スーパーバイザーは現在大阪府南河内郡の福祉型障害児入所施設及び児童短期入所事業、共同生活援助事業を行っている四天王寺太子学園の施設長として日々現場での声を聴いています。日本ポーテージ協会での様々なセミナーでの講師ではその経験からの温かい語り口と具体的な支援方法で多くの相談員・保護者をエンパワーしています。また事業所へのスーパーバイジングでは、事例検討会や現場の悩みにタイムリーに応えてくれると、大阪府内の事業所では多くの支援者に好評です。(広報)