2019年10月から実施されている「幼児教育無償化」は、その言葉のとおり幼児教育施設
(幼稚園、保育所、認定こども園、いわゆる障害児通園施設など)を利用する3歳から5歳の
すべての子どもたちの利用料が無償化されることです。
管轄する内閣府・文部科学省・厚生労働省(2019)は、幼児教育の無償化の趣旨を、「幼児教育
の負担軽減を図る少子化対策、生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の重要性」としています。
2015年の「子育て関連3法」(子ども・子育て支援法、認定こども園の一部改正法、子ども・子育て支援法及び認定こども園法の一部改正法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)が施行されてから4年。
2019年5月には「子ども子育て支援法改正案」が成立したことも相まって、今、幼児教育に社会的関心が集まっているのではないでしょうか。
待機児童の解消に必要な受け皿を確保するための「子育て安心プラン」をはじめ
幼児教育無償化により幼児教育の窓口がさらに広がりを見せ始めています。
しかし、これらの法的整備を背景に、社会では「保育の質の低下」が懸念されています。
「保育所保育指針」では保育所も幼稚園や子ども園と同様「幼児教育を行う施設」と明文化されました。
保育所においても幼児教育やその質について、時代のニーズを踏まえ、今一度考える必要がありそうです。
時代の変遷とともに、子育てや幼児教育のニーズも急速に変化しており、保護者への支援および指導も保育の一環となってきています。
また同時に親と子どもが一緒に過ごす時間が少なくなることもあるかもしれません。
私たち幼児教育従事者は、ポーテージプログラムの「家庭教育中心指導」の理論に立ち返り、子どもの
ことをよく知っている親へ具合的な発達の経過や成長の様子を伝えることや、親へ援助の方法を伝えるなど、
親が幼児教育へ積極的に参加するような幼児教育モデルが必要なのではないでしょうか。
現在の多様化する社会において、家庭と連携・協力することは、質の高い幼児教育・保育を提供するための大切な要素の一つです。
私たちは、いつの時代も、常にその理念のもとで一人ひとりのニーズに応じたきめ細やかな教育・保育が求められます。
日本ポーテージ協会 運営委員
千葉県 栄みなみ保育園 園長
南 博
(ポーテージポスト2019年夏号より)