幼児教育を行う施設のためのインクルーシブ保育モデルの開発

日本ポーテージ協会 理事・認定スーパーバイザー

山下由紀恵

 

 2025年度までの日本ポーテージ協会中期計画の中で、現在、「幼児教育を行う施設のためのインクルーシブ保育モデルの開発」という、研究プロジェクトを実施しています。ここまでの担当者は私の他、吉川・緑川・五月女・花田・山口の各認定スーパーバイザーです。

 このプロジェクトの中心課題は、2018(平成30)年に始まった、わが国の「家庭」「教育」「福祉」の連携『トライアングル・プロジェクト』の、幼児期での検討です。トライアングルの連携については、今年2024年4月、こども家庭庁・文部科学省・厚生労働省が共同で、「地域における教育と福祉の一層の連携等の推進について」という通知を各自治体に出していますので、ご存じの方も多いと思います。

   下図は、この「家庭」「福祉」「教育」領域での、2024年現在の連携を示しています。出生後、子どもたちは母子保健で健診を受け、相談支援を受けています。この段階で、相談支援者として、ポーテージ相談を開始しておられる方もあるでしょう。保健指導から児童発達支援事業等へ移行した段階で、職員として、個別療育と集団療育でポーテージプログラムを使っておられる団体会員や個人会員もあると思います。その後、就学後は、学校教育と放課後等デイサービス等の福祉が大きな役割を果たしています。

そのちょうど中間のステージ、児童発達支援から就学までの間の、「家庭」「福祉」「教育」の混在した、保育所・認定こども園・幼稚園の「幼児教育を行う施設」での、「配慮の必要な子どもの保育」のためのモデル形成が、本研究プロジェクトのテーマとなっています。

2024年度現在の地域トライアングル2

 

  国立特別支援教育総合研究所の令和3年度実態調査によると、「幼児教育を行う施設」在園児の8~10%は、「障害診断のある子ども」あるいは「診断がないが個別に配慮の必要な子ども」でした。にもかかわらず、地域のトライアングル連携に必要な「個別の教育支援計画」を「作成していない園」は、63%に上っていました。

  本研究プロジェクトでは、このような現状を踏まえて、幼児教育におけるクラスと個別の指導計画の一体化モデルを協力園と検討し、他機関との連携実態も検討してきました。研究協力園の実践を通して、トライアングルの隙間を埋める方法論としての、「地域インクルーシブ保育」モデルの成果も確認できましたので、今後、会員の皆様に成果を還元し、忌憚なきご意見をいただきたいと考えています。