やっててよかったポーテージ
「困った」から見つかった家族の楽しみ
運動68 1.5mくらい離れた大人に、動かなくても取れるボールを投げる
石川県 家庭訪問でのポーテージ相談
森岡 美登里さん
「何でも投げて困る!」から「ボール遊びをしよう!」に
じっとして話を聞くことがない、落ち着かない我が子准也が、いったいどんなことをできるようになるんだろう、と全くわからない状態でポーテージ相談を始めたのは1歳8か月のときでした。一人では取り組みにくかったコミュニケーションの課題を中心に相談が進み、成長に伴いできることが少しずつ増えていきました。
現在の准也にもつながる印象深い課題のきっかけは、座って課題に取り組むということを全くする気配のない准也のことで日常の中で困っていることを相談している中で、「何でもどこにでも投げてしまうんです」という相談でした。先生と考えた課題は「投げる先に『ここに投げよう』という目的を置いてみる」というものでした。投げて困っているのに投げることを練習させるというのは始めは不思議に感じましたが、困っている行動に対する解決策を丁寧に説明してもらい、納得できました。
子どもや家族にも無理なくできる環境設定をとことん試す
最初はボールをいくつか準備して、段ボールに投げて入れるよう促しました。しかし当の本人はなかなか段ボールの中に投げ入れようとせず、そうでない所にばかり投げるので、ただの段ボールでは面白くないからかもと考え、段ボールをサッカーのゴール風にちょっとデコレーションしてみたりもしましたが、あまり効果はありませんでした。
ボール遊びは好きだったので、ただ投げるのではなくそれをスポーツにつなげれば気持ちが変わるかもということで、室内でできる野球、サッカー、バドミントン、そしてバスケットボールと様々な形でアプローチしました。またそのような球技にも発展させて取り組ませました。じっと何かをするより体を動かす方が好きなこともあって、毎日のようにしているうち、野球では打つのも投げるのもそこそこできるように、バスケットも難しい角度からのゴールやドリブルもできるようになってきました。今では外用のボール等も買って、公園等でも野球、サッカー、バスケットをしています。
相談の場面でも、准也は先生が大好きな野球に楽しく付き合ってくれることも知っているので、少しずつ他の座っての課題にも取り組めるようになってきました。
家族で楽しめる、長く楽しめる活動がみつかった
それらの球技を見ることも好きになって、家では毎日のようにテレビで試合などを見ています。パパが好きなプロ野球やプロバスケットの観戦にも何度か行っていて、准也も迫力ある試合の生観戦が大好きになりました。障害のある方たちが趣味を持つことの大切さという観点でも、准也にとってはスポーツをすること、見ることが将来の余暇の充実に繋がることを嬉しく思っています。
子どもとのかかわり方を学び、ほめることの大切さを実感
月に一度のポーテージ相談を繰り返して、子どもとのかかわり方を学び、私は何より子供を誉めることの大切さを実感し、また実践できるようになったと思います。 小さい頃はできないことに目が行きがちで、何かできても「他の子はもっと早く何でもできているのに…」などと考えて大して誉めることもありませんでしたが、先生から「もっと大袈裟に誉めてあげればいいよ。それが成長につながるよ」というような言葉をかけていただいて、意識して「できたこと」あるいは「我慢できたこと」など何か見つけると大袈裟に誉めるようにしました。おかげで、誉められたり応援させたりすると「頑張ろう」と取り組める子供に育っているかなと思います。
現在は相談を始めて8年目となりますが、子供の成長を継続的客観的に見守って下さり、かつアドバイスなどいただける存在があることは、毎日一緒に過ごす親にとって、大きな安心感になっています。
准也くんは現在小学3年生。就学後、コロナ以降は相談の頻度は減りました。今回のボールを投げる運動の行動目標をきっかけに、幼児期の相談でお母さんの観察する力や環境調整、そしてなにより「できることに目を向けられるようになった」ことが大きなお母さんの力になって今につながっているようです。家族で楽しめる余暇活動にもつながって嬉しいですね。(広報)
「やっててよかったポーテージ」はポーテージ相談を受けた親御さんが相談を振り返って、「この課題をやっててよかった」「相談があってよかった」という声を掲載いたします。