作業療法士の視点から見たポーテージプログラム/学会発表の紹介と感想
石川・能登支部 大岩瑞枝(市立輪島病院)
奥能登にある総合病院で
私は、奥能登の輪島市(人口約2万5千人)で作業療法士をしています。勤務している市立輪島病院は、5病棟199床規模の市内で唯一の総合病院です。リハビリテーション科(以下、当科)では理学療法士(以下、PT)10名、作業療法士(以下、OT)5名、言語聴覚士(以下、ST2名)で主に成人対象のリハビリテーション(以下、リハビリ)を行っています。小児外来リハビリはPT3名、OT2名、ST2名が兼務しており、そのうちポーテージ初級認定は2名(PT、ST)、中級認定2名(PT、OT)、認定相談員が1名です。このようにポーテージプログラムを通した同一手法、同一視点で各療法士が関わっていることも大きな強みです。
私は、入職前に家庭訪問を行いながら中級を取得し、平成28年度に当院に入職したと同時に作業療法にポーテージプログラムを取り入れ、小児外来リハビリの受け入れを強化してきました。病院、小児科、科内の理解や協力があり、現在まで継続してくることができました。
作業療法士として感じるポーテージプログラムの利点
実践していく中で、日頃から感じているポーテージプログラムを活用することのメリットについて、作業療法士の視点から少し述べたいと思います。
チェックリストには、発達年齢に応じ、発達段階に沿った課題が具体的な行動目標として細かく記されており、保護者と目標の共有や、作業療法場面および家庭での課題の提案に役立っています。また、課題分析や段階付けは作業療法の作業分析段階付けと通ずるところが多くあります。
ポーテージプログラムでは家庭での指導方法を細かく具体的に保護者に伝えることができ、個別的であるため、保護者や子どもにとって無理がなく細かい修正も可能であることがとても良いと思っています。
ポーテージプログラムはリハビリ場面(相談場面)の評価や課題がそこで一旦終わって、次回…ではなく、家庭で取り組むことで、生活の中に継続することで獲得し、般化させていくことができます。子どもにとって家庭という安心した場において、一番信頼している親と二人三脚で行動目標をひとつひとつ獲得していける行程に魅力を感じます。保護者自身が手をかけることで子育ての実感や達成感を得て自信をつけていく例も少なくなく、これぞポーテージプログラムの親支援であると実感しています。
さらに、保護者との相談場面を設けることでは、家庭での困りごとや心配を相談できる場として重要な役割を果たしていると感じています。1回の対応時間が多少長くなっても、意義が大きいと感じています(業務の中での時間の制約やマンパワー不足は大きな課題でもあります)。
当科での家庭記録表の活用は保護者とのやりとりだけにとどまらず、記録表を通してリハビリの内容や相談内容を、子どもの所属する園や学校、福祉事業所などと共有することで、関係機関で統一した対応ができるなど、地域との連携にも役立っています。
作業療法学会での発表
2022年7月2~3日、金沢市で行われた第30回石川県作業療法学会で「小児における奥能登での地域連携~多職種連携の構築に向けた取り組み~」という演題で発表を行いました。
(以下、内容要約)
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当院外来小児リハビリでは、平成27年度まで受け入れ人数が少なかったこともあり、当院が療育を行える機関としての認知度が低いことや、情報が限定され、子どもの生活が捉えづらい、リハビリの情報が子どもの生活の場(学校や園など)で生かせていない等の問題点があった。そこで、「現場への出向」と「関係機関との情報共有の強化」を行ったことで、当院の外来小児リハビリの対応児数は6年間で2倍以上に増加した。連携においては、関係機関で互いの専門的役割の理解を深め、信頼関係を得ることができた。さらに就学移行支援をはじめとした支援体制が行政、教育、保育機関、福祉関係機関との連携が強化された。このような連携に対する継続的な取り組みに加え、人口が少なく関係者同士の距離が近い奥能登という地域特性を生かした顔の見える関係づくりが行いやすかったことも、地域連携の強化につながった一因である。
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発表では、書面での連携に個別のリハビリ記録(実施内容/家庭記録表)の使用していることを紹介しました。また、質疑応答では、当院の小児外来リハビリでポーテージプログラムの手法を取り入れていることや、各療法士が専門性を身につけていくために、スーパーバイザーの小坂先生に指導していただいていることもお話させていただきました。
最近では、他の医療機関から、当科へポーテージプログラムに関する問い合わせがあるなど、ポーテージプログラムを取り入れた当院の小児外来リハビリの認知度も上がってきているように感じます。
学会では、僭越ながら学会長奨励賞を受賞させていただきました。ご指導くださっている湖南支部の小坂先生をはじめ、関係者の皆様にこの場を借りて心から感謝申し上げます。今後も、様々な場面でポーテージの素晴らしさや有効性を発信していきたいです。