『ポーテージ学齢期生活支援ガイドー豊かな自立生活をめざして』 

試作版の完成

杉並和田支部(研修研究系研究グループ)

矢作淳子

 

ポーテージ相談を受けている方の中で学齢期以降の方の割合が増え、更に学齢期以降のお子さんが対象の放課後等デイサービスを行う団体会員も増えています。そこで従来のポーテージ相談の取り組みをその後の自立生活につなげる生涯発達支援の観点で、2020年から新しいプログラムを開発してきました。このたび日本ポーテージ協会の研修研究系研究グループ(杉並和田支部)は、「ポーテージ学齢期生活支援ガイド」(以下生活支援ガイドといいます)の試作版を完成しましたので簡単に紹介いたします。

1.開発の経緯

 日本ポーテージ協会は、発足当初は0歳から就学までの乳幼児だけを対象としていました。しかし乳幼児期にポーテージ相談を受けた保護者が就学後の相談継続を希望したり、就学前後に障害が明らかになり今後の家庭での対応を学びたいと就学後に相談を開始することも増えて、2005年の『新版ポーテージ早期教育プログラム』出版以降、学齢期の子どもの相談を多く行うようになりました。

 ところが就学までを想定したプログラムをそのまま就学後も適用すると様々な問題が生じ、2011年から学齢期以降のプログラムの研究を始め、2013年に東洋大学紀要などに『学齢期の子どものための行動支援プログラムー家庭・学校・地域における豊かな生活をめざしてー』を発表しました。その後、ポーテージフォーラム2016などで紹介し、資料を配布しましたが、手続きが複雑でプログラムが求める学校や地域との連携を具体的に実施するのが難しいとの感想が多く、結局は使用が広がらないままになっています。

 一方、学齢期の子どもの生活や学習を支援する機関は増え、学齢期の子どもに簡便に使用できるプログラムの公開を希望する声もあり、日本ポーテージ協会杉並和田支部で、新たに今までの早期教育プログラムやグループ指導カリキュラム、学齢期の子どもの行動支援プログラムにおけるポーテージ相談の理念や知見を生かして、学齢期の子どもに関わる様々な職種の方が活用できる『ポーテージ学齢期生活支援ガイド』を作成しました。

 

2.特徴

(1)トップダウンアプローチ

学齢期生活支援ガイド 指導の進め方

(2)応用行動分析学の原理を適用

(3)子どもの自立生活を支援

(4)本人の意思の尊重

   将来、自分で意思決定を行なえるように援助します。

(5)学齢期の子どもの生活全般のアセスメントを行い、生活の場に根ざした指導をめざします。更に様々な生活の場との連携も考えます。

(6)指導を展開するときは保護者のニーズを重視して、保護者や家族が子どもの将来像をポジティブにとらえられるよう、援助します。

 

3.構成

学齢期生活支援ガイドの構成

(1)アセスメントシート

(2)記録シート

(3)活動目録

 自立生活に向けて、学齢期に達成していることが望ましい行動を5領域(社会性、言語・コミュニケーション、認知・思考、身辺自立、運動)で下位領域ごとに並べたものです。できないところを探すのではなく、今後できそうなところや子どもの生活に必要なことを探すツールです。早期教育プログラムのチェックリストの代わりではないので、年齢段階や達成基準は示していません。

(4)マニュアル

4.今後について

 『ポーテージ学齢期生活支援ガイド』は現在試作版を一部にこう書いている状況です。実際に使っていただいたご意見、感想からさらに修正を行い、6月の40周年記念大会で会員の皆様に公開して、年度内に団体会員向けの説明会を実施する予定となっています。応用行動分析学を利用した指導方法など、日本ポーテージ協会の学齢期の子どもの指導の指針となることをめざしています。