障害のある児童生徒を分離した特別支援教育の中止とインクルーシブ教育の国の行動計画の作成を要請
-国連障害者権利委員会が日本政府に勧告-
日本ポーテージ協会会長 清水直治
日本においては「障害者の権利に関する条約」(全33条)は2014年に批准(2007年署名)をしていますが、進捗状況を最初の2年目に報告する制度に則って2016年6月に提出した「障害者の権利に関する条約第1回日本政府報告」について、「国連障害者権利委員会による審査が2022年8月22日・23日に行われ、教育に関して上記のような勧告がなされました。
民間からは同時に、「日本障害フォーラム(JDF) のパラレルレポート(日本への事前質問項目向け)」(2019年6月提出)、「日本の総括所見用パラレルレポート(日本障害フォーラム・2021年3月提出)」および「障害者の権利に関する条約に基づく日本政府が提出した第1回締約国報告に対する日弁連報告書(2019年1月)などが提出されていました。
第24条教育では、障害児が一般教育制度から排除されない「インクルーシブ教育」の推進と、まったく新しい概念である一人ひとりの子どものニーズに応じた「合理的配慮」の提供が挙げられています。
日本における障害のある児童生徒の学校教育は、学校教育法施行令22条の3の判定基準により適切な教育の場へ措置をするという適正就学の理念のもとに「特殊教育」として「分離教育」の制度が行われてきました。
その後2007年に法的整備のもとに「教育基本法改正」「学校教育法改正」等が行われ、「特殊教育」から、一人ひとりの教育的ニーズに応じた教育を理念とする「特別支援教育」に転換しました。
2013年には、「障害者の権利に関する条約」を受けて「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」が発出され、インクルーシブ教育の方向性が示されました。
そして「インクルーシブ教育」を推進する要件として、学校の「基礎的環境の整備」8項目(「連続性のある多様な学びの場」「交流及び共同学習」「個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成」等)と「合理的配慮」3観点11項目(観点:「教育内容・方法」「支援体制」「施設・整備」)が挙げられました。こうした経緯のなかで、しかしながら、特別支援学校・特別支援学級に在籍する児童生徒の人数には増加が示されています。
今後も、この報告制度もとづいてさらに4~6年ごとに進捗状況を報告することが求められています。2022年6月現在で、「障害者の権利に関する条約」の署名国・地域数は164、締約国・地域は185になっています。このたびの勧告に応えた日本の進捗状況はもとより、各国・地域の進捗状況を見守りたいと思います。
日本ポーテージ協会は,障害のある人達の権利条約とインクルージョンについて,今後もご案内していきたいと思います(広報)